【二つの時間の美学】オリーブの「未来」と希少バルサミコ酢の「厚み」に学ぶ、美の価値 

この季節、娘と楽しみにしている旬の味覚、いちじく。その甘美な香りを追いかけるように訪れた京都の高島屋で、私はイタリア・OLIVO社の希少なバルサミコ酢に出会いました。

テイスティングを通して知ったのは、バルサミコ酢は単なる調味料ではないということ。その豊富なラインナップを前に、8年物か10年物か、ロゼかホワイトかと、娘と時間をかけて美の選択を検討しました。その結果、**テイスティングで味わった10年物が持つ「奥深いカラー」**に心惹かれ、その年月の厚みに投資することを決め、再びお目当ての品に会いに行きました。

しかし、そこで運命的な出会いがありました。再び会いに行った時、店員さんから教えていただいたのは、いちじく入りの10年物がちょうど入荷したばかりだということ。予想をはるかに超えるはちみつのような芳醇な甘みは、バルサミコ酢の常識を覆すほどの衝撃です。熟成という過去の美を追い求めた結果、私たちは旬という現在の美を発見しました。

なぜ私たちは、これほどまでに**「時間」**という見えないものに惹かれ、投資するのだろうか。

今、私の手元には、そのバルサミコ酢と同じ美の哲学を秘めた6種類のオリーブの挿し穂があります。こちらは年輪を重ねた**「過去の厚み」ではなく、これから根を張り、枝を伸ばしていく「未来の美」**を象徴しています。

この二つの時間が示す**「美の価値」。大人の美意識とは何かを、オリーブの生命力と、瓶に閉じ込められた熟成のロマンス**から紐解いていきましょう。

目次

第一章 歳月が育む美の「厚み」

私たちは、なぜ小さな一本のバルサミコ酢(120ml)に5,000円という価値を見出すのでしょうか。  

OLIVO フィグバルサミコ酢

イタリア・モデナ地区で製造された「OLIVO フィグバルサミコ酢」は、イチジクの濃厚な甘さが特徴です。通常のサラダはもちろん、バニラアイスクリームやブルーチーズにかけるなど、デザート感覚で楽しめる一本です。

 それは、単なる成分や製法ではなく、その「厚み」を教えてくれるの存在があるからです。  

私は、高島屋へ再びお目当ての品に会いに行く際、事前に一本の電話を入れました。それは、**オリーブについて学びを深めていること、そして「多様な味を知りたい」という探求心に応じて、前回親身に相談に乗ってくださった店員さんから、ぜひ購入したいと娘と決めていたからです。**その方からこそ、より詳しいお話を伺いたいという、信頼という名の確信を持って足を運ぶ——これは、モノを消費する行為ではなく、**プロフェッショナルとの対話を通じて美意識を磨く「投資」**です。

彼女(店員さん)との対話の中で、私たちは単に10年物という**「年数」を追うのではなく、「色の奥深さ」という歳月の厚み**を、五感で理解することができました。

当初の予定では、濃い色の10年物という**「完成された過去の美」に投資するつもりでした。しかし、そこで新たに教えられたのが、この季節に合わせたいちじく入りの10年物**が、ちょうど入荷したばかりだという情報です。

イメージ写真:熟成されたバルサミコ酢と、旬のいちじく

その芳醇な甘みは、まさにOLIVO社ならでは。バルサミコ酢の常識を覆すはちみつのようなコクのある甘さに、私は心を奪われました。過去に執着するのではなく、信頼する専門家の情報と**「旬」という現在の出会いを大切にする。美の価値は、こうして人の繋がり時間の厚み**が交差する瞬間に、最も輝きを増すのだと知りました。

この**「厚み」**は、歳月を重ねるごとに経験を積み、多様な選択肢の中から本質を見抜く力を持つ、私たち大人の女性の美しさと重なります。

第二章 未来を育む美:再生する生命力

バルサミコ酢という**「過去」が凝縮された美に心を奪われた後、私の視線は、今、手元にある6種類のオリーブの挿し穂**へと移ります。

熟成された美が**「厚み」であるなら、このオリーブたちは、これから枝を伸ばし、根を張っていく「未来の美」**そのものです。

小さな瓶に集うそれぞれの挿し穂は、今はまだ力強くありませんが、その姿には**「再生」**の力が漲っています。水をやり、環境を整え、語りかける手間は、単なるガーデニングではありません。それは、自らの肌や心に栄養を与え、明日へのリカバリーを促す行為と全く同じです。

私たちは、**結果としての「完成された美」を求める一方で、こうして「育む時間」**に価値を見出す大人の美意識を持っています。

しかも、その挿し穂は一種類ではありません。6つの異なる個性を持つ品種が瓶の中に並んでいるのは、まるで美の多様性を小さな庭で表現しているようです。それぞれが異なるスピードで、異なる形に成長していくように、私たち女性の美しさにも画一的な正解はなく、一つ一つの個性が尊重されるべきであることを、この瓶の中の生命が静かに語りかけてくれます。

**過去の「厚み」**に感謝しつつ、**未来の「生命力」**を信じる。この二つの時間の投資こそが、尽きることのない美の源泉となるのです。

第三章 美意識は五感と信頼で磨かれる

バルサミコ酢とオリーブの挿し穂、この二つの時間の美に触れることで、私たちは一つの確信を得ます。それは、真の美意識は、「見えないモノへの投資」によって磨かれるということです。

バルサミコ酢の瓶を前にした時、娘と私が行ったテイスティングは、まさにその美意識を象徴する瞬間でした。濃い琥珀色に包まれたバルサミコ酢は、瓶の外見からはその年数による**「厚み」「コク」の違いを判別できません。知識やスペックだけでは分からない、舌の上で感じる複雑な時間の重なり**こそが、その製品の価値を証明します。

そして、その五感の体験をさらに深めたのが、信頼できるプロフェッショナルの存在です。

私は、親身に初めての来店で相談に乗ってくださった店員さんを信じ、その方の勤務時間を電話で確認してから店へ向かいました。それは、「この人から学びたい」「この人の選ぶモノに投資したい」という、人への信頼に時間を費やしたからです。この無形の投資があったからこそ、私たちは運命的ないちじく入り10年物という美の発見に至ることができました。

この哲学は、オリーブの挿し穂にも通じます。瓶の中で根を待つ挿し穂も、バルサミコ酢の熟成と同じく、**目に見えないところで生命力を育む「待つ時間」**への投資です。

大人の美意識とは、五感を使い本質を見抜く力と、信頼という無形の価値に時間と手間を惜しまない姿勢によって、初めて重層的に磨かれていくものなのです。

結論 未開封の美意識と、ふたつの時間への投資

私たちは、バルサミコ酢という**「熟成された過去」から、オリーブの挿し穂という「これから育む未来」**まで、二つの時間に美意識を投じる旅をしてきました。

過去と未来、対極にあるように見えるこの二つの美学は、**「目に見えないモノに価値を見出し、信じて待つ」**という点で、完全に一致しています。

瓶の中に閉じ込められたバルサミコ酢は、テイスティングの瞬間まで、その真の「厚み」を隠し持っていた**「未開封の美」でした。一方、瓶の中で根を待つ挿し穂もまた、私たち自身の「まだ見ぬ未来の美しさ」を象徴する「未開封の美」**です。

大人の女性の美意識とは、決してパッケージされた完成品を追い求めることではありません。

それは、五感と信頼を使い、モノや人との出会いの中で、**「まだ開かれていないモノ(価値)」**を見抜く力。そして、自分の肌や心、そして小さなオリーブに、未来の生命力という時間を投資し続ける勇気のことです。

過去の深みに敬意を払い、未来の可能性を慈しむ。この二つの時間を丁寧に生きる姿勢こそが、私たちを最も重層的で、尽きることのない美へと導いてくれるのです。

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